絵手紙の先生

長女が小学2年生、次女が年長の5月、途上国勤務から引き続き地方へ転勤になった我が家。
帰国してホッとしたものの、初めての地で何もわからず、方言も難しく。
そんな中、ご近所の方々が色々助けて下さって、暮らし始めることが出来ました。
今から20年前のことです。


それ以来、離れても今もなお、仲良くさせていただいている方がいます。
その方は、家具を一式貸してくださいました。
新婚当時の家具が倉庫に眠っているからと、
座卓だけで暮らしている我が家を不憫に思われたそうです。


絵が好きで、絵本が好きな保育士のその方は、
今は老人グループホームで夜勤に携わっているのですが、
認知機能が低下しているお年寄りにも絵本を読んでいるそうで、
特に食べ物の絵本を読むと、ご飯を食べたことを思い出してくれるそうです。


読み聞かせに向くユニークな絵本をたくさん教えてくれました。
常にバッグに数冊絵本を忍ばせて、読んだ本の記録をまとめた物もいただきました。
イラスト付きで子どもたちの反応も記録。


そんな彼女が保育の仕事をしないのは、人間関係に疲れたから。
自分のやりたい保育が出来ない。
上の人と合わない。
そんなまっすぐな彼女が私は大好き。強いなぁと思います。
私は自分を曲げて周りに合わせてしまいます。
どこまで我慢できるか続けてしまうタイプ。
娘に見られているというのもあるけれど、彼女だってお子さんがいる。
そのままの母親を見せられる強さ。


芸術家は内からあふれ出る情熱を作品にしますよね。
描きたいから描く。
「排泄に似ているからしかたない」と言った画家の奥さんの言葉は、生活を共にした家族の苦労を物語っていると思いました。


絵が好きなその友人は、次々作品を送ってくれます。
決まって定形外です。
おそらく郵便屋さんは驚かれただろう、よくぞ無事に届いてくれました!という作品も多々あります。
そして、私はこの方の作品が、心底好きなのです。元気をもらえるのです。
郵便受けに見つけると、たいてい笑みがこぼれます。
これまでの作品は大事に全部保管してあります。
家族もその方をよく知っているので、届いたらリビングの展示コーナーにしばらく飾ります。
そのペースは月に一回だったり、毎週だったり。
とにかく自由です。
切手も絵にまつわる物を選んで貼ってくれています。年代物もあります。
切手については、気付いてくれたのが嬉しい!と言われました。
私も切手が好きなので、必ず見ています。


絵手紙を習い始めたときいて、画風が変わらなければいいなぁと思いました。
でも、大丈夫。
絵手紙の先生は、そのはみ出したパワーを押し込めず尊重してくれたそうで、
彼女は今、絵手紙を教えることもあるそうです。


今日、帰宅した夫が嬉しそうに
「ほら、また届いたよ~。」
ハガキを縦に2倍くらい伸ばした紙に、山頂でヨガのポーズをとる自画像。
ミヤマキリシマを見に登ったそうです。